羊たちはもう逃げようとせず、魔術師が彼らの肉と皮を必要とする日が来るのを、大人しく待つようになった。

投稿者: kibakoichi

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真っ先に理解すべきこととして、人がその中で生きるところの眠りは、自然な眠りではなく、催眠性の眠りである。人は催眠下にあり、この催眠状態はつねに維持および強化されている。何らかの力の働きのためには、人間を催眠状態に留め、人間が真実を見て自分の現状を理解するのを妨げた方が都合が良いのだと思える。

ある東洋の小話によると、むかしとても裕福な魔術師がいて、たくさんの羊を飼っていた。この魔術師はとてもケチだった。羊飼いを雇いたくない。羊たちのうろつく草原に柵を設けるつもりもない。羊たちはよく森に迷い込んで、断崖から落ちることもあった。それによく逃げ出した。魔術師が自分たちの肉と皮を欲しがっているのを羊たちは知っていて、これは勘弁してもらいたかったからだ。

ついに魔術師はいいことを思いついた。彼は羊に催眠をかけ、羊たちに暗示した。第一に、おまえたちは不死身であり、皮を剥がれても大丈夫。それは健康によいことで、気持ち良いぐらいだ。第二に、魔術師は良き主人であり、羊たちが大好きだ。羊たちのためなら何でもする。第三に、何が起こるにせよ、それは今日のことではないので、心配はいらない。さらに魔術師は、おまえたちは羊ではないのだと暗示をかけた。何匹かに、おまえたちはライオンなのだと言った。何匹かに、おまえたちは鷹なのだと言った。何匹かに、おまえたちは人間だと言った。何匹かに、おまえたちは魔術師だと言った。

このすべてを終えた後、魔術師はもう、羊のことで気をもんだり、心配したりすることがなくなった。羊たちはもう逃げようとせず、魔術師が彼らの肉と皮を必要とする日が来るのを大人しく待つようになった。

この小話は、人間が置かれた状況をよくあらわしている。

 

「グルジェフ/奇跡を求めて(ウスペンスキー著)」

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