木葉功一のブログ

~テキスト倉庫と日記~

月: 12月, 2012

生は最も意識の低い人々、最も深く眠っている人々に支配されている。

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たとえば、人間の生は意識を有する一群の人々によって支配されていると言うことができるだろうか? 彼らはどこにいるのだろう? 彼らは何者なのだろう? 我々はそれとちょうど正反対のことを目にしている。つまり生は最も意識の低い人々、つまり最も深く眠っている人々に支配されているのだ。

生において、最良で最強、最も勇気ある諸要素が優勢であるのを目にしていると言うことができるだろうか? とんでもない。それどころか、あらゆる種類の粗野や愚かしさの優勢を目にしている。また、単一性への、統一への熱望が我々の生の中に見てとれると言えるだろうか? もちろん言えはしない。我々はただ新たな分裂、新たな敵対心、新たな誤解を見るばかりだ。

というわけで、人類の現況には、進化が進みつつあることを示すものは何一つない。それどころか、人類を個人と比較してみるなら、本質を犠牲にして人格が、つまり人工的で真実でないものが生長していること、また、自然で真実なその人本来のものを犠牲にして外部からきたものが生長していることをきわめてはっきりと見ることができる。これらとともに我々は自動性の増大を目にする。

現代文化は自動機械を必要としている。そして人々は獲得した自立の習慣を疑いの余地なく失い、自動人形に、機械の一部になりつつあるのだ。これらすべてがどこまでいったら終わるのか、また出口はどこにあるのか、いやそれどころか終わりや出口があるかどうかさえ言うことはできない。

一つだけ確かなことがある。人間の隷属状態は拡大しつづけているということだ。人間は喜んで奴隷になっているのだ。彼にはもう鎖はいらない。彼は奴隷であることを好み、誇りさえ感じているからだ。これこそ人間に起こりうる最もいとわしいことだ。

 

ゲオルギイ・グルジェフ(1866.1.13〜1949.10.29)

羊たちはもう逃げようとせず、魔術師が彼らの肉と皮を必要とする日が来るのを、大人しく待つようになった。

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真っ先に理解すべきこととして、人がその中で生きるところの眠りは、自然な眠りではなく、催眠性の眠りである。人は催眠下にあり、この催眠状態はつねに維持および強化されている。何らかの力の働きのためには、人間を催眠状態に留め、人間が真実を見て自分の現状を理解するのを妨げた方が都合が良いのだと思える。

ある東洋の小話によると、むかしとても裕福な魔術師がいて、たくさんの羊を飼っていた。この魔術師はとてもケチだった。羊飼いを雇いたくない。羊たちのうろつく草原に柵を設けるつもりもない。羊たちはよく森に迷い込んで、断崖から落ちることもあった。それによく逃げ出した。魔術師が自分たちの肉と皮を欲しがっているのを羊たちは知っていて、これは勘弁してもらいたかったからだ。

ついに魔術師はいいことを思いついた。彼は羊に催眠をかけ、羊たちに暗示した。第一に、おまえたちは不死身であり、皮を剥がれても大丈夫。それは健康によいことで、気持ち良いぐらいだ。第二に、魔術師は良き主人であり、羊たちが大好きだ。羊たちのためなら何でもする。第三に、何が起こるにせよ、それは今日のことではないので、心配はいらない。さらに魔術師は、おまえたちは羊ではないのだと暗示をかけた。何匹かに、おまえたちはライオンなのだと言った。何匹かに、おまえたちは鷹なのだと言った。何匹かに、おまえたちは人間だと言った。何匹かに、おまえたちは魔術師だと言った。

このすべてを終えた後、魔術師はもう、羊のことで気をもんだり、心配したりすることがなくなった。羊たちはもう逃げようとせず、魔術師が彼らの肉と皮を必要とする日が来るのを大人しく待つようになった。

この小話は、人間が置かれた状況をよくあらわしている。

 

「グルジェフ/奇跡を求めて(ウスペンスキー著)」

脳は存在の「写し絵」であり、それが主体ではない。

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グルジエフの表をあらためて見てほしいが、存在は自灯明、法灯明という交互の組み合わせでつらなっているので、どの位置にいても、そこから上あるいは下にシフトするには、自分の姿勢を解放あるいは否定し、異なる姿勢の中に投げ出すことで実践される。人間のかかわりということのなかにも、法灯明の人は自灯明へ、自灯明の人は法灯明へと自分を投げ出すことで、階段をシフトする効果を得ることもできる。この場合、監視するわたしというのがいると、今までの自分の存在状態からは決してシフトはしないので、自意識が消えてしまう瞬間というものが必要で、その空白に瞬時に切り替わることになる。つねに真上か、真下のものが、自分と正反対の性質を持ち、そこに自分を明け渡すところに、変成が存在するのである。

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わたしたちの感情とか母性本能は脳の第二層、大脳辺縁系としての旧哺乳類脳に関係しているので、グルジエフの図の人間、哺乳動物、無脊椎動物の配列がそのまま、このマクリーンの三層の脳に対応することになるが、似ているが、同じものではないのは言うまでもない。脳は存在の「写し絵」であり、それが主体ではない。
爬虫類脳を抑制すると、ヒトはもっと進化するというよりも、土台の弱体化した建物を建てることに等しく、この絞り口を通じて、わたしたちの内面宇宙が閉鎖的に展開されているのではないか。わたしたちがR領域を排除すると、わたしたちは脳の球体宇宙に閉じ込められ、進化の袋小路に入る。神殿の入口に、気持ち悪くて怖い蟲の回廊があり、それを乗り越えなくてはならないのは映画でいつでも出てくる場面である。あくまで牡牛座という土のサインでは、天に向かうことはなく、進化はいつでも地下へと向かう。愛と平和、調和的な心というのは、脳でいえば、真ん中の旧哺乳動物脳に関係しやすいかもしれない。三層の場合には、一層目と三層目は似ている。そして二層目はそれらとは違う。前者は自灯明的だし、後者は法灯明だ。わたしたちが爬虫類脳に向かうには、哺乳動物脳が抵抗する。ザリガニが来ると、犬が吼えるのだ。

                 ☆

人間の裏腹さの問題として、爬虫類脳に接触するチャンスが少ない人は、爬虫類脳の本能に支配されやすい。毎日のように触れている人はある程度それをコントロールすることができる。レーサーは公道では安全運転するのと同じだ。トラは殺し合いをしないが、鳩は戦うと最後は相手を殺すところまで行くという言葉もそれを言いたいのだろう。爬虫類脳を排除して、ヒトの進化をもくろむ人は、ある日爬虫類世界に滅ぼされる。

 

牡牛座について〜度数の意味とサビアンシンボル」松村潔著・より抜粋。

 ポール・マクリーンの脳の三層構造仮説

 

仕様変えました。

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パラレルワールド・4

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ウィリー気味に僕はバイクを加速させる。ぎゃあっとハルがしがみつき背中に乳房が押しつけられて僕はちょっとドキドキする。渋滞の壁が迫ってくる。ギアを落とし車線を踏んで車の隙間を縫うように僕はブルターレを走らせる。このまま街を抜けて湾岸に出よう。ビジョンの中の荒野みたいに広いところを気持ちよく飛ばそう。そう思って青山一丁目の交差点を右折し六本木の交差点を抜けて海に向かって南下しているとバックミラーがギラリと光る。1台の車がすごいスピードで後ろから追い上げてくる。僕はバイクを右に避ける。重いエンジン音を響かせながら黒曜石みたいに黒く輝く平たい車体が、思い切り車線を跨いだ形で、ブルターレの左に並ぶ。
ランボルギーニ・アヴェンタドール。本物走ってるトコ初めて見た。こんな車をこんなにラフに乗り回してんのってどんなヤツ、と思って助手席の窓を僕はのぞき込む。そしてそこに美猟先輩の顔を見つける。
艶のある大きな黒い瞳。つんと高い鼻。桜色の唇。僕の心を鷲づかみにしたあの顔つき。
制服じゃないし少しメイクもしてたけど美猟先輩に間違いない。
バイクを盗んだ興奮、馬で赤い荒野を疾走したビジョンを再び味わえた爽快感、ハルとタンデムして走っている愉しさが、吹き飛ばされて全部消える。ほんの数秒並んだだけで、黒いアヴェンタドールは僕とハルを追い抜いていく。テールランプが遠ざかっていく。僕はそれを呆然と見つめる。
何してんですか先輩。
どうしてそんな車に乗ってるんです?

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 甲斐美猟って四大の大学生とか一流企業のリーマンとかとメチャクチャ遊びまくってんだよ知らねーの?
 甲斐美猟、婚約したらしいよ、相手は超エリートの公務員。

ハルと武市先生の言葉が頭の隅をよぎって消える。
ギアをセカンドに叩き込んで思い切りアクセルを開ける。リアを振って弾かれたようにブルターレが加速する。
「ちょっと!何なのよマリオ!?」
驚いて大声を出すハルを無視して、行く先をふさぐ車を僕は乱暴に追い抜いていく。
「やだ危ない!やめてってば!!」
ゴコンとヘルメットをぶつけて僕の耳元でハルが叫ぶ。僕は運転に集中する。追われてるのに気づいたのかアヴェンタドールがスピードを上げる。エキゾーストノートが大きく唸る。気を抜いてると振り切られそうだ。
何でこんな夢中になって追いかけてるんだろう、とギアチェインジして路線バスを追い抜きながら僕は思う。あの黒いランボルギーニに追いついて横に並んでそれから?どうするつもりだ?
バスの前に隠れていたワゴン車が車線変更して前をふさぐ。バイクを倒して分離帯側の隙間を僕は無理矢理すり抜ける。ハルの小さな悲鳴が聞こえる。
僕は先輩に見せつけたいんだ。紅い拳銃と合体してどんどん変わりつつある今の僕を。
そして見たいんだ。美猟先輩を助手席に乗せて悠々とランボルギーニを走らせている男の顔を。

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                      (RUBY THE KID  Bullet:4)

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