パラレルワールド・2

投稿者: kibakoichi

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「草薙・・・マリオくん」
「はっはい!」
「あなたとはおつきあいできません」
ほとんど物理的なショックを受けて、僕はその場でガクンとよろけた。
「・・・・・・・・・・・えっ・・・と、あ・・の・・・・・どうし・て」
雲が流れて夕陽の光が戻ってきた。先輩がすっと目を細めた。
「顔」
へ?
「顔がウソくさい」
それってどういう意味ですか?
「大勢の三年の女子があなたのことよく噂してる。あんなキュートでピュアな男子、どこ探してもいないって。でも嘘。あなたコスプレしてる。仮面かぶって自分にも他人にも嘘ついて生きてる。そう顔に書いてあるの」
桜色の唇から流れ出た言葉が、スパスパスパと僕を斬った。
何か言わなきゃ。
言うんだ。
早く。
「・・先輩、ぼぼ僕」

「世界と真っ正面から向き合って生きているかどうかで、男の人の価値は決まるの。欺瞞して逃げてる男は弱いの。弱い男は大嫌い」

頭を鉄の棒で殴られたような衝撃を受けて、僕はその場に立ちすくんだ。キイィィィィンと耳鳴りがして風景がぐんぐん遠ざかった。先輩が僕に背中を向けた。 パレットとナイフを手に取り、再び絵を描き始めた。退場、と言われた気がした。ゆっくりと足を持ち上げ、のろのろと美術室を出た。

                 ☆

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鉄のハンマーで岩を叩き割ったような衝撃音とともに白い閃光が炸裂してジャックナイフを決めたようにディアベルの尻が跳ね上がる。光の線が一直線に伸びてパトカーが跳ね上がって火を噴きながらクラッシュする。二重三重に重なり合って爆発音が響き渡り炎の球がいくつも上がってカーブの向こうに消えていく。ハルが甲高い悲鳴を上げる。武市先生が息をのむ。僕はぶるぶるぶるぶる震えながら白髪の男の横顔を見ている。ゴーグルの奥で男の瞳がギラギラと燃えている。
男がこっちを向く。僕を見る。紅い拳銃を僕に見せる。

「来い。俺が変えてやる」

背筋を電流が駆け上がって鳥肌がたち髪の毛が逆立つ。頭の中で何かが切れる。行け、という自分の声を僕は聞く。キャデラックのバックシートのドアの厚みに足をかけて踏み切り、男のバイク目がけて、僕は思い切りジャンプする。
「あ───っ、バカ!!」
「マリオ─────ッ!!」

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                   (ルビー・ザ・キッド/Bullet : 01)

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