アタシはアタシを誰にも殺させない。この土地に縫いつけられた魂と肉体を自由にするんだ。

投稿者: kibakoichi

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 そしてアタシは唐突に自分が心の底から生きることを諦めてしまっていることに気づいた。足下の川面に雫が落ちた。涙だった。後から後から溢れ出て 止めようとしても止まらなかった。川の中に座り込んで吠えるようにアタシは泣いた。朝焼けが消えて風景が見なれたものに戻る頃にようやくアタシは泣きやん で自分がしなければならないことを震える心ではっきり悟った。
 アタシはアタシを誰にも殺させない。この土地に縫いつけられた魂と肉体を自由にするんだ。

             (リンゴ・ロッソ・1888年・アメリカ・ユタ州)

 

 ぱたぱた、と大粒の雨が開いた携帯の画面に当たる。
  降り始めたスコールはあっという間に109の屋上を濡らし、薄汚れた渋谷の街を洗い、あたし の体を激しく叩いた。ずぶ濡れになりながら、吠えるようにあたしは泣いた。自分で自分を殺す義務から、解放されたことを知って泣いた。暖かい雨粒に打たれ ながら、安堵に胸を満たされて泣いた。
 美鶴君。
 会いたい会いたい、会いたい!
 今すぐ!

                   (赤西林檎・2010年・日本・東京)

 

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